マーク金井blog

カテゴリー: ルール、マナー

2013年04月16日改めて思う‥‥ゴルフルールは何のためにあるのか!?

2013年のマスターズトーナメント。プレーオフの末、アダム・スコットが豪州勢としては初の優勝で幕を閉じました。アンヘル・カブレラとの死闘はマスターズの歴史に残る名勝負でしたが、今年はもうひとつ歴史に残る出来事がありました。

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GDOより転載

タイガー・ウッズの池ポチャ騒動です。マーク金井4月14日のブログで書きましたが、予選ラウンド2日目、タイガーは15番の3打目でスーパーショットを放ちましたが、ボールはピンにダイレクト(もしくはショートバウント)に当たり、当たった反動でボールは手前の池の中に沈みました。タイガーは池ポチャ後、ドロップして打ち直して5オン。ワンパットで沈めてボギーでホールアウトしたのですが、ラウンド後にタイガーは「3打目よりも2クラブ下がって打ち直した」とコメントを残しました。彼のこの一言がルール解釈の物議を醸し出し、結局、タイガーはスコアカードを出した後に2打罰のペナルティが科せられたのです。(ルール専門家のマイク青木さんも詳細をレポートされています)

このドロップのシーンが騒動の始まり‥‥

このドロップのシーンが騒動の始まり‥‥

GDOより転載

タイガーのような偉大なゴルファーがルールを誤解していたのは予想外でしたが、今回はゴルフにおけるルールの役割について考えてみたいと思います。

まずルールというと、皆さんはどんなことを頭に思い浮かべるでしょう?

2度打ちしたら罰を科せられる‥‥
OBを打ったら1ペナ払って打ち直し‥‥
ボールが木の上に止まったらアンプレして1打罰‥‥

なんてことが頭に浮かぶ人も多いでしょう。ゴルフのルールとは、ルールを破ると(守らないと)、ゴルファーは「罰」を受けるもの。学校の校則、会社の社則、法律的な役割として受け止めている人が結構多いです。

その一方で、ルールで定められたOB後の処置やアンプレアブル宣言というのは、罰打はあるものの「救済」だと考ている人も少なからずいます。こういう人はルールは罰を与えるものではなくて、ゴルファーの手助けになるものだと解釈しています。

もちろん、どちらも間違っていません。ルールには「罰」の要素と「救済」の要素があります。では、なぜルールは「罰」「救済」を定めているのでしょうか? そもそもルールとは何のためにあるのか?

ルールのない世界を想像してみて下さい。

ティグランドを無視してボールを打ち始めていいのか?
他人のボールを打ってもいいのか?
クラブを15本以上使ってもいいのか?

ひとつは「無秩序」になるのを防止するために、ルールは存在します。ゴルファーがたった1人でプレーするならばルール無用でも無秩序にはなりません。何でもありです。でも、大抵の人は1人でも何らかのルールを定めるでしょう。好き放題にプレーするよりも、秩序あるプレーの方がやりがいがあるし、プレーを楽しめるからです(もちろん例外もありますが)。

次に「何故ルールを破ると罰せられなけばならないのか?」という問いに答えましょう。これも前述したことと同じで、無秩序な状態になるのを防止するためです。ルールはプレーヤーが「ちゃんと守る」ことで成立します。罰を強いることでプレーヤーを不利な状況に追い込めます。加えて、「罰」を設けることで、「ルールを守る」という空気も作れます。実はこれは大事なことで、無秩序を「抑止」することにもつながるのです。

そして、もうひとつルールには役割があるのです。これはスポーツ全般にも当てはまりますが、特にゴルフでルールのもう一つの大事な役割は‥‥
円滑なプレー進行
ためです。例えば、OBやアンプレ、そしてタイガー騒動のような池ポチャ後の処置。普通、OBゾーンというのはプレーが困難なエリアです(河川敷とかだとそうじゃない場合もありますが)。ブッシュとかにボールが入ってしまうと、ボールを探すのに時間がかかる。ボールが見つかったとしてもそこから脱出するのにさらに時間がかかりますよね。でも「OBを打ったら、元の場所から打ち直す」というルールが定められていれば、プレー進行が遅くなるのを防げるのです。池ポチャの処置でも、「あるがままの状態でプレーせよ」とルールで定められたらどうでしょう。池に入ったボールを下がすのに時間がかかります。運良く見つかったとしても、池の中のボールを打つことは大変なことです。しかし、池に入った時は「元の場所から打つ」「境界線とピンを結んだ後方にドロップ」というルールがあれば、プレー進行を早められるのです。
ゴルフは他のスポーツに比べると、プレータイムが長い競技です。そしてプレーそのものに制限時間がありません(プロやアマチュア競技会ではプレータイムを定められています)。なので、放っておくとそれことプレータイプが長くなることはあっても、短くなることはありません。だから、ルールでは遅延行為について罰則が定められていますし、他のルールも進行が早くなるような配慮がなされているのです。

4月14日のブログでタイガーは「ルールを熟知」していないと書きました。ルールを熟知するには「ルールブック」をしっかり読み込むことが大事ですが、そのルールは「何のために定められているのか」を知っておくことも大事だとボクは思います。河川敷のワンペナ、OBを打った後の特設ティからのプレー。これらはゴルフ本来から外れたルールだと解釈している人が少なくありませんが、「プレー進行」という観点から考えれば、決して間違ったローカルルールではないのです。

ルールは何のためにあるのか?

プレーが遅いゴルファーというのは、たとえマナーが良くても他のプレーヤーに迷惑をかけるだけでなく、ルール違反を犯しているとボクは思います。そして、プレーが遅いゴルファーには「ルール違反」している自覚がありません。残念なことに。白州次郎さんは「play first」を強くアピールしていますが、これはマナーが悪いだけでなくて、ゴルフルールに違反していることを強く警告しているのです。

おっと、メルマガの締切り時間が迫ってきました。プレー時間を短縮する方法については、日を改めてじっくり書きましょう~。

 

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2013年04月14日ゴルフルールの真実‥‥タイガー・ウッズの2ペナ騒動

いよいよ今年のマスターズも決勝ラウンド。トップは7アンダーのスネガーとカブレラ。3日目を終えて大混戦模様になってきました。明日の優勝争いが楽しみになってきましたが、昨夜はタイガー・ウッズの池ポチャ後のドロップ処置について騒動がありました。予選ラウンド2日目、タイガーは15番の3打目でスーパーショットを放ちましたが、ボールはピンにダイレクト(もしくはショートバウント)に当たり、当たった反動でボールは無情にも手前の池に‥‥コロコロと転がり落ちました。まるでゴルフ漫画「風の大地」(坂田信弘原作、かざま鋭二画)に出てくるようなシーンでした。

タイガーは池ポチャ後、ドロップして打ち直して5オン。ワンパットで沈めてボギーでホールアウトしました。TV画面からは‥‥

このドロップのシーンが騒動の始まり‥‥

このドロップのシーンが騒動の始まり‥‥

同じ場所で打っているように見えましたが、ラウンド後にタイガーは「3打目よりも2クラブ下がって打ち直した」とコメントを残したそうです。これが物議を醸し出し、タイガーはスコアカードを出した後に2打罰のペナルティが科せられました。誤所からのプレーということなんでしょう。

誤所からのプレーは規則 20-7 により 通常 重大な違反がない限り (詳細後述) ストローク・プレーでは2打罰、マッチプレーでは そのホールの負け のペナルティーが科される。

これに該当するとスコアカードには2打罰が科せられたスコアを記載しなくてはなりません。池に入って打ち直す場合、「プレーした元の場所」、もしくは「ボールがハザード境界線を横切った地点とホールを結ぶ線上の後方」にドロップしてプレーを続行することがルールで義務付けられています。タイガーの場合、このどちらにも当てはまらなかったものと思われます。

ですので、マスターズ2日目のタイガーの場合、15番は「6」ではなくて「8」のスコアを記入することになります。ところがタイガーは「6」のままスコアを提出しています。なので、今度はスコア誤記で過少申告をしたことになります。ゴルフの場合、スコアを多く書いてもルール違反ではありませんが、スコアを少なく書いたら即、失格処分です。これを受けて、一部のメディア、一部のプロの間では「タイガーは失格なのでは?」というコメントを発しているのです。

ちなみPGAツアーでは、このような騒動が過去にもありました。
http://news.golfdigest.co.jp/news/pga/article/26355/1/

今回、マスターズ委員会は失格処分ではなくて、2打罰の処分を下しました。これまた物議を醸し出しましたが、ゴルフには超法規的なルールもあります。

どうやら規則33-7が適用されたようで、この超法規的処置でタイガーは失格処分ではなくて、2打罰処分が下されたのです。

これが今回のタイガーの「池ポチャ打ち直し騒動」の大まかな流れです。無罰でもなく失格でもない。2打罰というのは玉虫色の裁定のような感じがしますが、マスターズに限らずアマチュアの月例競技にも競技委員は必ずいます。競技委員は野球に例えるならば、審判です。ルール上のトラブルをいかに裁定するか審判(競技委員)に委ねられる。これがゴルフに限らず、スポーツ全般の基本であり鉄則なのです。これが揺らいでしまうと競技そのものが成立しなくなるからです。先々週の女子ツアー同様、競技委員が裁定を下したわけです。タイガーはそれを受け入れ、そしてプレーを続行しているのです。タイガーを批判するのは的外れだとボクは思います。

もちろん、タイガーにも落ち度はかなりあるでしょう。落ち度とは、彼がゴルフのルールを熟知していないことです。アマチュア(プロにも多いです)の中には、ルールで分からない時は「自分に不利に処置すればいい」と思っている人が少なからずいます。例えば、カート道路にボールが止まった時、フェアウェイ側にドロップすると有利になるから、自分は不利な方であるラフにドロップすればいい‥‥確かにこれはフェアプレー精神に溢れていますが、これもルール的には正しい処置ではないのです。ルールには「自分に有利とか不利」なんてことは一切書かれていません。カート道路を含め、動かせない障害物にボールがある時は、

動かせない障害物の中や上にボールがある時、または、スタンスやスイングを妨げる時の救済は、救済の二アレスト・ポイント(邪魔にならない場所)から 1クラブ・レングス以内にボールをドロップして 無罰でプレーをすることが許される。

ルールには「自分に有利、不利」は一切明記されていません。先ほどのカート道路の処置については、フェアウェイ側にニアレストポイントがあれば、ラフにドロップすると、タイガー同様、「誤所からのプレー」となってしまい、2打罰が科せられるので。合点がいかない人も多いと思いますが、これがゴルフのルールなのです。ルールというのは損得勘定で作られているのではありません。損得というのは主観的なものだからです。ゴルフに限りませんが、ルールは主観的な考え方が徹底的に省かれているので、時には自分に不利なことをやっても、「ルール違反」と見なされてしまう場合があるのです。

タイガーのような偉大なゴルファーがルールを誤解していたのは予想外でしたが、ギャンブラーであり小説家の森巣博は、これからカジノに試みようとする人にこんなアドバイスを送っています。

1.ゲームのルールをよく覚えなさい。

無境界の人、森巣博著。引用)

写真 (18)
たかがルール、されどルール。

ゴルフは紳士のスポーツであり、フェアプレー精神でプレーしたいものです。しかし、それ以前にルールに熟知すること。自分が損する(不利益)ことをやっていればルール違反にならない‥‥これは大きな間違いだということを肝に銘じておきたいものです。
んじゃ(▼▼)b

◆JGA ゴルフ規則はこちら