マーク金井blog

カテゴリー: シャフト情報

2013年03月27日マーク金井がシャフトを作る本当の理由 その3

カーボンシャフトはシートワインディング(シートラッピング)法とフィラメントワインディング法の2種類作り方がありますが、最近のシャフトは前者のシートワインディングがほとんどです。シートワインディングの場合、プリプレグと呼ばれる薄いカーボンシートをマンドレルと呼ばれる芯金に巻き付け、それを120度前後加熱。熱硬化処理を施します。分かりやすく言うと、陶磁器を作るような釜の中に入れて熱処理することで何層にも巻かれたカーボンシートは、ゴルフシャフトとして生まれるわけです。

シャフトを設計する上でのポイントとなるのは次の3つです。

・どんなプリプレグ(カーボンシート)を用いるのか
・プリプレグをどんな風に巻き付けるのか
・マンドレル(芯金)の形状

この3つの要素の中で、最近、シャフトメーカーが強くアピールしているのがプリプレグ(カーボンシート)の弾性率。弾性率(正確には引張弾性率)とは、外力に対する物質の変形し難さを表すもので、GPa(ギガパスカル)又はtf/mm2で表されます。20トンよりは40トン、40トンよりは70トンの方が高弾性。高弾性なほど製造が難しく、高価な源材料となります。高弾性シートを使うほど、ねじれづらいシャフトが作りやすく、フィーリングがシャープになってきます。「このシャフトは50トン高弾性シートを採用」とか「業界発の70トンシートをフルレングス」とアピールしている場合、「このシャフトは高価で貴重な材料を用いた高級シャフト」でであることを堂々と訴えているわけです。フルレングスというのは「シャフト全長」という意味で、高価な材料をふんだんに使っているということを知らしめているのです。

では、高弾性シートを使えば、
誰もが打ちやすい高性能シャフトが作れるのか?

残念ながら答えはノーです。

確かに高弾性は高価で貴重な材料です。しかし、材料だけではシャフトの性能は決まりません。料理に例えると分かりやすいでしょう。高級な食材を用いても料理人の腕前が悪かったり、調理を間違えてしまうと‥‥美味な料理になりませんよね。シャフトもしかり。材料だけでは良いシャフトには決してなりません。誤解を恐れないで言えば、安易に高弾性シートを多用してしまうと、ゴルファーに打ちづらいシャフトが出来上がってしまう恐れもあるのです。高弾性シートを使うと挙動がシャープになってトルクを抑えられますが、反面、挙動がシャープになりすぎてアマチュアゴルファーには難しいシャフトになる危険性もあります。加えて、インパクト時の振動伝達性が高まるので、芯を外して打った時、手首やひじへの負担が増してきます。

では何故、高弾性シートをアピールするシャフトが増えてきたのか?

一番の理由は売りやすいからでしょう。「高弾性」と「低弾性」というふたつの言葉があれば、シャフトに詳しくない人でも何となく、「高弾性=高性能」と関連付けられるじゃないですか。低弾性だと飛びをイメージしづらいけど、高弾性だと飛びをイメージしやすい。もちろん、メーカーも材料だけでシャフトを設計しているわけではありません。材料以外の部分でもしっかりとしたシャフト作りをしていますが、ユーザーにアピールしやすいのが「高弾性」。「高弾性カーボン」はセールスのキラーワードになるから、ことさら「高弾性」をアピールしているわけです。そしてゴルフ業界に限りませんが、シャフトも「分かりやすい商品」の方が売りやすいし、実際に売れるからです。

マーク金井、すなはちボクはシャフトを設計する場合、「高弾性シート」にあまりこだわってません。逆張りとか、シャフトメーカーと差別化したいからじゃないですよ(笑)。アマチュアゴルファーにとって本当に振りやすいシャフト、打ちやすいシャフトを作りたいというのが「設計基本理念」。これを実現するのに、今のところは「高弾性シート」は必要ないと思っているからです。ちなみに現在設計している85gのアイアン用シャフトにはわざと「低弾性シート」を用いようと考え、現在試作を繰り返しています。「低弾性」には「高弾性」にはないメリットがあって、重量を重くしやすい、フィーリングをマイルドにしやすくなるから。車に例えるならば、高弾性シートはF1マシン。低弾性シートはオートマチックのセダン。シャフトの挙動がシビア過ぎない方が、アマチュアゴルファーにとって扱いやすいし、ミート率も格段に良くなる。手首やひじへの負担も減らせるメリットがあるのです。すでに市販しているアナライズのシャフトも、弾性率にこだわらないで「扱いやすさ」「ミートのしやすさ」を最優先してカーボンシートを選択しています。シャフトおっと、そろそろ報知新聞の撮影が始まります~。

んじゃ(▼▼)b


2013年03月24日マーク金井がシャフトを作る本当の理由 その2

「マーク金井がシャフトを作る本当の理由 その1」←こちらから

どんなシャフトにリシャフトすれば、ゴルファーは飛んで曲がらないクラブを手に入れられるのか?

シャフトメーカーもボクも、これが「シャフト作り」のコンセプトになっていますが、メーカーさんとボクとでは立ち位置が大きくことなります。メーカーさんは数多く、そして効率良くシャフトを販売しなくてはなりません。このため、売れ筋商品を作ること、そして売りやすい商品を義務付けられています。言葉を変えれば「手離れ」が良いシャフトを作り、「手離れ」が悪いシャフトを作らない傾向があります。

このため、60g以上のシャフトの多くは軟らかい「R」フレックスのシャフトを作らないことが多いです。重めのシャフトは硬い方が売れる(売りやすい)。軟らかいのは売れない(売りづらい)と考えているからです。

対して、ボクはシャフト単体の性能よりも、ゴルファーのスイングに好影響が出るシャフトを作りたい。それが設計の「コンセプト」。そして売りづらくてもゴルファーの上達につながるシャフトは必要不可欠。メーカーさんが作りたがらないならば、「よっしゃ自分で作ってやろう」と思ったのです。

具体的に言うと、ウッド用、アイアン用とも重めで軟らかめのシャフトを設計しました。最初に作ったのはアイアン用。次にユーティリティ用ときて、昨年末にはFW用(ドライバーも使用可能)を作りました。硬さだけにこだわるのではなく、重量フローにもこだわり、

・アイアン用は75g
・ユーリティリティ用は70g
・FW用は65g

それぞれで重さを少しづつ変えているのは、クラブの長さがそれぞれ異なるからです。ウッド用よりもUT用が少し重く、UT用よりもアイアン用の方を少し重くする。これで重さと長さのバランスがマッチし、振りやすさが揃ってきます。

硬さについてはアイアン用は1種類。UTとFW用は2種類ラインアップしています。当初はすべて1種類だけの予定でしたが、試作で作った硬めのシャフトがすごく良かったので‥‥ハードヒッター用に(本当は自分用に)作っちゃいました(笑)

話を元に戻しましょう。ボクのシャフト作りのコンセプトはスイングが良くなることですが、そのためのポイントは重さ、硬さの他に調子があります。シャフトメーカーは、多くのユーザーに対応すべく手元調子、中調子、先調子とラインアップしています。でも、ボクは3つの調子を出すつもりは今のところありません。アナライズのオリジナルシャフトはすべて手元にしなるポイントがあり、いわゆる手元調子です。

手元調子にする理由は‥‥手元がしなった方が切り返しのタイミングが取りやすいこと、打ち急ぎのミスを減らせること、シャフトがタメを作ってくれること、そしてプレーンに沿ってクラブを下ろしやすくなることです。先調子のようにインパクトでヘッドが走る感じにはなりませんが、先端挙動が落ち着いているので入射角が安定すること、そしてミート率が良くなるメリットもあるんです。今市販しているオリジナルシャフトもミート率の良さには、かなり自信があります。

 

もちろん手元がしなりさえすれば良いわけではありません。全体の硬さに対して手元側をどれだけしならせるか。これが設計&開発の妙味。加えて‥‥

中間部分の硬さ
先端側の硬さ
シャフト全体をどれぐらいしなせるか
シャフトのしなり戻りのスピード感
どれぐらいねじれさせるか(トルク)

こういった所をどんな風に設計するでシャフトのキャラクターはガラッと替わります。設計段階では剛性分布の数値、材料をどう配分するかにこだわって試作。そして、試作シャフトを実際にコースにて試打してフィードバック。神田には24時間打てる室内試打スタジオがありますが、シャフトを最初にテストする時は、スタジオでは絶対に打ちません。1発目は必ずコースで打ちます。それもホームコースで。オリジナルシャフトについては、必ず千葉市民ゴルフ場で1発目を打っています。

練習場(試打スタジオ)とコースではゴルファーの気分、気合いが違うからです。これはゴルフの上手下手とはまったく関係ありません。ツアープロでも練習場とコースと比較すると、コースに出た時の方がヘッドスピードが0.5~1m/s上がります。ボクの場合、ヘッドスピードはほとんど変わりませんが、まったく同じ気分にはなりません。シャフトもクラブも試打は1発目が大事です。その1発目をリラックスして打てるシチュエーションではなく、緊張したシチュエーション場所で打ちたい。そうしないと本当の性能を吟味できないからです。だから試作シャフトは‥‥何が何でも1発目はコースなのです。

今回の試打ラウンドでは、58gのドライバー用のRシャフト、それと85gのアイアン用シャフトをテストしました。

58gの試作シャフトは自分がイメージしているよりも軟らかく、シャフト全体もしなり過ぎる感じなので‥‥早速修整をリクエスト。シャフトが動き過ぎるのを修整する方法はいくつかありますが、今回はもう少し弾き感を出すために、中間部分の剛性を少し上げること、トルクを少し絞ってほしいことを開発製造担当スタッフに伝えました。

ちなみに試作第1号のスペックは、こんな感じです。

長さ45.5インチ
ヘッド重量195g
クラブ重量310.2g
バランスD2

振動数 228cpm
センターフレックス 3.26kg

45インチに換算すると振動数は230cpmぐらいでしょう。これを235cpmぐらいまでにアップすること、そしてセンターフレックスを3.5くらいまで上げることをリクエストしました。

58gのシャフト試打に使ったヘッドはテーラーメイドのグローレ。ヘッドが軽めなので鉛を貼って195調整~(▼▼)b

58gのシャフト試打に使ったヘッドはテーラーメイドのグローレ。ヘッドが軽めなので鉛を貼って195調整~(▼▼)b

もちろん、シャフトの挙動(フィーリング)は数値だけで決まるものではありません。同じ数値に仕上げても材料、製法、そして剛性分布が異なれば、まったく違うフィーリングのシャフトになります。それが分かっているから、シャフト設計時には開発製造スタッフと入念にコミュニケーションが不可欠です。アナライズのオリジナルシャフトコンポジットテクノさんで製造してもらってますが、わずかな修整も「なんでここまで分かるの」って感じで、新たな試作品が上がってきます。ボクのコミュニケーション力よりも、開発製造担当スタッフがボクの言葉の文脈、意図を汲取り、それを製品に反映させる能力が非常に優れているからなせる技です。

次回は、シャフトの調子、しなり感はどうやって設計していくのかについて、説明しましょう~。

 

んじゃ(▼▼)b

 


2013年03月22日マーク金井がシャフトを作る本当の理由 その1

ゴルフクラブ、特にドライバーはリシャフトするのが当たり前になってきました。プロ、上級者はもとより、ここにきてアベレージゴルファーもメーカー純正品ではなくてシャフトメーカーのシャフトにリシャフトする人が増えてきました。

リシャフト、即ち、純正シャフトよりもシャフトメーカー品を使うメリットはいくつもあります。リシャフトによって、ゴルファーは自分の好きな重さ、硬さ、しなり(調子)、を選べます。加えて、シャフトを交換する時にはヘッドのスペック(フェース向き、ライ角、リアルロフト)の調整も可能。最近はカチャカチャ式で弾道調整できるクラブが増えてきましたが、普通のクラブでもリシャフト時にシャフト装着方向を調整することで、カチャカチャ式と同じように弾道調整が可能なんです。

では、どんなシャフトにリシャフトすればゴルファーは飛んで曲がらないクラブを手に入れられるのか?

シャフトメーカーは「飛んで曲がらない」シャフトを供給すべく、数多くのシャフトをラインアップしています。重さは40~80gの幅で選べますし、調子も手元調子、中調子、先調子を選べます。加えて、カーボンシートの材料にこだわったシャフト、例えば、4軸繊維や高弾性シート、ボロン素材といったモノを使った高級シャフトもラインアップされています。

にもかかわらず、ボクは昨年からオリジナルのシャフトを設計、開発、そして市販を初めています。今日も千葉市民ゴルフ場でドライバー用2種類、アイアン用1種類、試作シャフトをテストしてきました。

すでに200種類以上のシャフトが市販されているというのに、ボクは現在、58gのドライバ-用と85gのアイアン用シャフトを設計、試作中。5月くらいにに発売を予定しています。

毎年、シャフトを200本以上試打している人間が、わざわざ自分でシャフトを作るには理由があります。それは、シャフトメーカーさんとボクとではシャフト開発のスタンスが異なるからです。

シャフトメーカーのシャフトの多くは、シャフトそのものの性能を向上させる製品が大半です。加えて、なぜか「重くて軟らかい」シャフトを作ろうとしません。例えば、ウッド用だと70g台でRの設定は非常に少ないです。そして、クラブメーカー側もカスタム品ではRの設定がほとんどありません。ウッド用の場合、60g以上の重量帯だと、ラインアップされているのはSとXだけです。Rを使うユーザー、Rを求めるユーザーがいないというスタンスを取っています。

でもボクは、「重くて軟らかい」シャフトは、60g台、70g台のRは必要不可欠だと思っています。これまで1000人以上のアマチュアのスイングを分析してきましたが、その多くは硬いシャフトを使い過ぎ、それが原因でアウトサイド・インの軌道になってしまったり、インからあおってチーピンを打っているからです。

そうです、シャフトの硬さが合ってない、硬過ぎるシャフトを使っていることでスイングを崩しているのが嫌と言うほど分かっているあから、シャフトメーカーが作りたがらない「重くて軟らかい」、「重くてしなりを感じる」シャフトを設計したくなったのです。

ウッド用(FW、ドライバー)の65g台のシャフトは昨年作りました。

硬さはRがメインです。
そして今日は、58gのドライバー用のRシャフトをテストしました。
おっと~。撮影の時間になってしまいました。この続きは、明後日アップします~。

んじゃ(▼▼)b

白いシャフトは58gでR。黒いシャフトは70gでハードヒッター限定品。

白いシャフトは58gでR。黒いシャフトは70gでハードヒッター限定品。