マーク金井blog

2013年04月14日ゴルフルールの真実‥‥タイガー・ウッズの2ペナ騒動

いよいよ今年のマスターズも決勝ラウンド。トップは7アンダーのスネガーとカブレラ。3日目を終えて大混戦模様になってきました。明日の優勝争いが楽しみになってきましたが、昨夜はタイガー・ウッズの池ポチャ後のドロップ処置について騒動がありました。予選ラウンド2日目、タイガーは15番の3打目でスーパーショットを放ちましたが、ボールはピンにダイレクト(もしくはショートバウント)に当たり、当たった反動でボールは無情にも手前の池に‥‥コロコロと転がり落ちました。まるでゴルフ漫画「風の大地」(坂田信弘原作、かざま鋭二画)に出てくるようなシーンでした。

タイガーは池ポチャ後、ドロップして打ち直して5オン。ワンパットで沈めてボギーでホールアウトしました。TV画面からは‥‥

このドロップのシーンが騒動の始まり‥‥

このドロップのシーンが騒動の始まり‥‥

同じ場所で打っているように見えましたが、ラウンド後にタイガーは「3打目よりも2クラブ下がって打ち直した」とコメントを残したそうです。これが物議を醸し出し、タイガーはスコアカードを出した後に2打罰のペナルティが科せられました。誤所からのプレーということなんでしょう。

誤所からのプレーは規則 20-7 により 通常 重大な違反がない限り (詳細後述) ストローク・プレーでは2打罰、マッチプレーでは そのホールの負け のペナルティーが科される。

これに該当するとスコアカードには2打罰が科せられたスコアを記載しなくてはなりません。池に入って打ち直す場合、「プレーした元の場所」、もしくは「ボールがハザード境界線を横切った地点とホールを結ぶ線上の後方」にドロップしてプレーを続行することがルールで義務付けられています。タイガーの場合、このどちらにも当てはまらなかったものと思われます。

ですので、マスターズ2日目のタイガーの場合、15番は「6」ではなくて「8」のスコアを記入することになります。ところがタイガーは「6」のままスコアを提出しています。なので、今度はスコア誤記で過少申告をしたことになります。ゴルフの場合、スコアを多く書いてもルール違反ではありませんが、スコアを少なく書いたら即、失格処分です。これを受けて、一部のメディア、一部のプロの間では「タイガーは失格なのでは?」というコメントを発しているのです。

ちなみPGAツアーでは、このような騒動が過去にもありました。
http://news.golfdigest.co.jp/news/pga/article/26355/1/

今回、マスターズ委員会は失格処分ではなくて、2打罰の処分を下しました。これまた物議を醸し出しましたが、ゴルフには超法規的なルールもあります。

どうやら規則33-7が適用されたようで、この超法規的処置でタイガーは失格処分ではなくて、2打罰処分が下されたのです。

これが今回のタイガーの「池ポチャ打ち直し騒動」の大まかな流れです。無罰でもなく失格でもない。2打罰というのは玉虫色の裁定のような感じがしますが、マスターズに限らずアマチュアの月例競技にも競技委員は必ずいます。競技委員は野球に例えるならば、審判です。ルール上のトラブルをいかに裁定するか審判(競技委員)に委ねられる。これがゴルフに限らず、スポーツ全般の基本であり鉄則なのです。これが揺らいでしまうと競技そのものが成立しなくなるからです。先々週の女子ツアー同様、競技委員が裁定を下したわけです。タイガーはそれを受け入れ、そしてプレーを続行しているのです。タイガーを批判するのは的外れだとボクは思います。

もちろん、タイガーにも落ち度はかなりあるでしょう。落ち度とは、彼がゴルフのルールを熟知していないことです。アマチュア(プロにも多いです)の中には、ルールで分からない時は「自分に不利に処置すればいい」と思っている人が少なからずいます。例えば、カート道路にボールが止まった時、フェアウェイ側にドロップすると有利になるから、自分は不利な方であるラフにドロップすればいい‥‥確かにこれはフェアプレー精神に溢れていますが、これもルール的には正しい処置ではないのです。ルールには「自分に有利とか不利」なんてことは一切書かれていません。カート道路を含め、動かせない障害物にボールがある時は、

動かせない障害物の中や上にボールがある時、または、スタンスやスイングを妨げる時の救済は、救済の二アレスト・ポイント(邪魔にならない場所)から 1クラブ・レングス以内にボールをドロップして 無罰でプレーをすることが許される。

ルールには「自分に有利、不利」は一切明記されていません。先ほどのカート道路の処置については、フェアウェイ側にニアレストポイントがあれば、ラフにドロップすると、タイガー同様、「誤所からのプレー」となってしまい、2打罰が科せられるので。合点がいかない人も多いと思いますが、これがゴルフのルールなのです。ルールというのは損得勘定で作られているのではありません。損得というのは主観的なものだからです。ゴルフに限りませんが、ルールは主観的な考え方が徹底的に省かれているので、時には自分に不利なことをやっても、「ルール違反」と見なされてしまう場合があるのです。

タイガーのような偉大なゴルファーがルールを誤解していたのは予想外でしたが、ギャンブラーであり小説家の森巣博は、これからカジノに試みようとする人にこんなアドバイスを送っています。

1.ゲームのルールをよく覚えなさい。

無境界の人、森巣博著。引用)

写真 (18)
たかがルール、されどルール。

ゴルフは紳士のスポーツであり、フェアプレー精神でプレーしたいものです。しかし、それ以前にルールに熟知すること。自分が損する(不利益)ことをやっていればルール違反にならない‥‥これは大きな間違いだということを肝に銘じておきたいものです。
んじゃ(▼▼)b

◆JGA ゴルフ規則はこちら


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